人は誰にでもパーソナルスペースがあります。ただ、これについて詳しく説明できるのは専門的な勉強をした人くらいでしょう。パーソナルスペースを意識するだけで人間関係がうまくいくこともあります。詳しく解説しますので参考にしてみてください。
パーソナルスペースとは?
『パーソナルスペース』という言葉を聞いたことがありますか?
人間関係がうまくいかない・他人といると居心地の悪さを感じるなどと感じる場合、パーソナルスペースがうまく取れていない可能性があります。
例えば、カフェやレストランなどでは、パーソナルスペースを意識して座席の配置をしているケースが多いです。これは、利用者が他人を意識せずに居心地よく長時間過ごせる空間を提供するためです。
人間関係を構築したり、快適な空間づくりをしたりする上で必要となる、パーソナルスペースについて見ていきましょう。
心理的な縄張り空間のこと
パーソナルスペースを英語で表記すると『personal-space』であり、読み方は日本で使われているカタカナ表記と同じです。
パーソナルスペースとは、個人が心理的に持っている縄張り空間のことで、目には見えませんが、性別・人種に関係なく誰もが持っています。
この縄張りに踏み込まれると、人は居心地の悪さを感じたり、相手を苦手と感じたりすることがあります。逆に、親しみを持つ相手にはパーソナルスペースが必要ないと感じることもあるでしょう。
パーソナルスペースの分類を紹介
パーソナルスペースは人によって個人差があり、広い人もいれば狭い人もいます。
一般的にこの間柄ならこのくらいの距離という目安はあるので、順に見ていきましょう。
密接距離(0~45cm)
人と自分の間に45cm以下のスペースで、密接した状態でも居心地の悪さを感じないケースです。これはかなり親しい恋人同士や夫婦、親子といった間柄でしょう。
あなたが密接距離程度近寄っても嫌がらない相手は、あなたのことを「自分と近しい人物だ」と考えている可能性が高いと言えます。
個体距離(45~120cm)
次に距離の近い個体距離は、友人や知り合ったばかりの異性との間に向いたスペースです。手を伸ばせば相手に届く距離であり、表情や感情の動きなどが読み取れる距離でもあります。
この個体距離の範囲内にいても、苦に感じない相手とは相性がよく、ありのままの自分を見せられる相手の可能性が高いでしょう。反対に、個体距離の段階で近すぎると感じる相手には、苦手意識を感じているかもしれません。
公衆距離(350cm以上)
公衆距離はもっと遠い距離です。教壇に立つ教師と生徒、会社のトップと社員といった間柄や、まったく知らない人とはこのくらいの距離があると圧迫感や居心地の悪さを感じません。
多くの人が、街中や学校、職場などで無意識に他人と公衆距離を取っているのを考えるとわかりやすいでしょう。
パーソナルスペースが狭い人
パーソナルスペースが狭い人は、人に近寄られることにあまり抵抗を感じません。コミュニケーション能力が高い人がこれに当たります。
しかし、こうした距離の近さが圧迫感につながる場合もあります。パーソナルスペースが狭い人の特長を知って、うまく付き合っていく方法を考えてみましょう。
社交的な性格
社交的な性格で、積極的に人とコミュニケーションを取る人は、パーソナルスペースが狭い傾向にあります。
裏を返すと、他人の領域に自ら入ってしまう人と捉えられがちです。場合によっては無神経に映ることもあるでしょう。
しかし、人に相談を持ちかけられた時に誠実に応えたり、輪に入れない人を率先して引き込んだりすることのできる人とも言えます。チームや会社のリーダーなどは、こうしたパーソナルスペースの狭い、社交的な性格の人が多い傾向にあります。
偏見をあまり持たない
パーソナルスペースの狭い人は、無条件に人を信用する力が強い人が多いです。人に対して先入観や偏見をあまり持たない人と言えます。
他人の自慢話も熱心に聞いてあげられる性格のため、人に好かれることが多いでしょう。しかし、詐欺まがいの話を持ちかけられたり、一度断った誘いを何度も持ちかけられたりといった、トラブルに巻き込まれやすい側面も持っています。
自分のパーソナルスペースが狭く、人を信じやすいと自覚している人はこうした点に注意しましょう。
自分に自信がある
パーソナルスペースが狭い人は自分に自信があるため、人に近づくことに抵抗が少ないとも言えます。成功体験が多く、高い自己肯定感の持ち主が多いです。
パーソナルスペースと同じく、目では見えない自信があまりに強いと、無自覚に人を振り回してしまったり、傷つけてしまったりすることがあります。
そうした経験や自覚のある人は、もしかすると他人のパーソナルスペースを尊重すると人間関係のトラブルが減るかもしれません。
パーソナルスペースが広い人
パーソナルスペースの広い人の特長はどうでしょうか。
パーソナルスペースの広い人は、身近な関係にある人とでも一定の距離を取りたいと考える人が多いです。側に立ったつもりが少しずつ距離が広がっていったことがあれば、その相手はパーソナルスペースが広いのかもしれません。
こうしたタイプは一見、人への関心が少ないように見えますが、人間関係に対して慎重に行動する性格である場合が多くあります。
パーソナルスペースの広さは、生まれつきの性格も大きく関係しますが、後天的な理由が原因で他人と距離を広く取るようになるケースもあります。
相手のパーソナルスペースが広いなと感じた場合には、無理に距離を縮めずにペースを合わせるあげると、よい関係を築けるでしょう。
ここからは、パーソナルスペースの広い人の特長を紹介しましょう。
内向的な性格
パーソナルスペースが広い人の多くは、おとなしく内公的な傾向があります。恥ずかしがり屋であったり消極的であったりする人が多いです。
もちろん個人差はあります。一見社交的に見える人でも、心の中では相手と距離を取っている人もいるでしょう。
こうした性格の場合、心に自分だけの絶対領域を持っています。例えば、急にその領域に踏み込まれてしまうと、不快感が生じて内向的になってしまうかもしれません。
相手の態度をみながら、どう感じているかに気を配りつつ時間をかけて関係を築いていけるとよいでしょう。
警戒心が強い
警戒心が強く、本音をなかなか話さないタイプの人もいますが、こうした人は、パーソナルスペースが広い人と言えます。
先天的に警戒心が強い人もいますが、人生経験の中で人に傷つけられたり、騙されたりしたことから人と距離を取るようになった、という人もいるはずです。
警戒心が強い人は、常に「悪いことは起きないか」「空気を読まなくては」と気を張っているので、自然と笑顔も減ってしまいます。
無理に距離をつめるず、こちらから笑顔で挨拶をすることから関係を始めるとよいでしょう。あなたの笑顔に笑顔を返してくれるようになった頃には、2人の距離も縮まってきたと実感できます。
自分に自信がない
パーソナルスペースが広い人は、人にどのように思われるかをいつも気にしていたり、容姿などにコンプレックスがあったりと、自信を持てない人が多いです。
例えば、英語が苦手な人が外国人の大勢いる場所に行くと、何となくその場から離れたいという心理が働きます。これは、英語が苦手なことを知られたくないという深層心理が働いているためです。
いつも人との距離を広く取っている人は、一人でも平気な人に見えがちですが、このような自分への劣等感があるのかもしれません。
見た目の態度だけで人に興味がないのだろうと決めつけず、よいところを口に出して褒めると、徐々に関係も深まっていくでしょう。
パーソナルスペースの男女の違い
パーソナルスペースは性格や後天的な要素だけでなく、男女の間でも違いがあるとされています。男女のパーソナルスペースの取り方についてみていきましょう。
女性は円形で男性よりも狭い
一般的に女性は男性よりコミュニケーション能力に優れていて、人と時間を共有することを好みます。
女性のほうがパーソナルスペースが狭く、人の懐にスッとはいったり、人の考えや言葉を受け入れたりするのに抵抗が少ないのです。
また、パーソナルスぺースも全方位均一で円形であることが多いと言われています。
個人差や状況にもよりますが、女性が自分のペースで近づいた男性との距離が、男性にとっては近すぎる、と感じることがあります。女性としては何の狙いもない行動でも、男性からすると「自分に好意がある」「自分と親しい証拠」と勘違いしてしまうことがあるようです。
女性同士や本当に親しい間柄以外の男性と関わるときは、意識的に距離を取るようした方が無難でしょう。
男性は楕円形で女性より広い
男性は遺伝子的に自分の縄張りを重要視する特性が備わっているため、パーソナルスペースも広い傾向にあります。
特に面と向かった相手に対して警戒心を強めるため、正面のパーソナルスペースは広いようです。逆に左右のパーソナルスペースは狭いため、仲良くなりたい男性とテーブルを囲む時は正面よりも隣に座った方が、相手に近づける可能性が高いかもしれません。
個人差はありますが、意中の男性がいる場合は、パーソナルスペースを逆手に取って距離を縮めてはいかがでしょうか。
パーソナルスペースが日本人は狭い?
奥ゆかしく慎重なイメージのある日本人ですが、実は諸外国に比べてパーソナルスペースが狭い傾向にあります。
日本人のパーソナルスペースについて詳しく解説します。
日本人のパーソナルスペース
日本人のパーソナルスペースの平均を、社会距離で見ていきましょう。
日本大学芸術学部研究所教授の佐藤綾子さんによると、世界的な平均距離は120~350cmとなっていますが、日本人の場合は、100cm前後のようです。
世界平均と比べると20~250cmも狭いパーソナルスペースであることがわかります。世界規模で見るとおとなしく謙虚な国民性の日本人ですが、人との距離が近く、外国人からするとその距離間に不快感を覚えることもあるようです。
また、日本人の女性は世界的にみて人気がありますが、その理由のひとつとして、このパーソナルスペースの狭さが関係しているのかもしれません。
実は「ニホンジンチカイヨ!」と思われている? シャイなはずの日本人のパーソナルスペース
アメリカ人は95cmなど国によって異なる
諸外国のパーソナルスペースを見てみると、文化や国民性によってもバラつきがあることがわかります。
東欧や中東などでは120cm以上のパーソナルスペースを好むそうです。一概に理由はわかりませんが、内戦や紛争に巻き込まれた歴史をもつ地域なので人々の警戒心が強いのかもしれません。
日本と近い90cm程度のパーソナルスペースなのは、南米や北欧、旧ロシアの国々です。
南米のオープンな国民性をみると、パーソナルスペースの狭さに納得がいきます。一方、北欧や旧ロシアの場合は、1年を通して寒い気候のため、人々は身を寄せ合うことに抵抗がないのかもしれません。
自信家で社交的なイメージのアメリカ人は、95cmと日本より少し狭いくらいです。多人種が暮らすアメリカでは、明るい国民性とは裏腹に他人を警戒する傾向にあります。
Preferred Interpersonal Distances: A Global Comparison
日本人は他人への警戒心が少ない
日本には他人を敬い礼儀を重んじる国民性があります。人を見下さず、立て前であっても礼儀正しく接する国民性のため、他人を疑ってかかる人は少ないようです。
また、平和な時代が長く続く島国であることも警戒心が薄い理由のひとつでしょう。治安が安定していて、武器の所持が認められない法治国家のため、自分たちは守られているという安心感が強いのかもしれません。
土地の広さの違い
物理的な土地面積の広さの違いもあります。日本の国土や都市部の人口密集度は世界から見ても独特です。満員電車や都市部の建物との狭い境目を見ても、ほかの国のスペースの使い方とは全く異なることがわかります。
日本人は、普段から人が近くにいることに慣れているため、人との距離が近くても気にならないことがあるでしょう。
集団主義によるもの
日本は集団教育、団体行動が一般的で、ほとんどの人が幼少期から人に集団主義の中で生活しています。間を詰めて並ぶことや、数人が狭いスペースの中にいることに慣れているため、狭いパーソナルスペースへの抵抗が薄いのです。
こうした日本人特有の『列からはみ出ないことが美徳』とする考え方は、外国人からみると奇妙に映ることがあります。
人とのパーソナルスペースに注意を
人と仲良くなりたいとき、外国人と接するときにはパーソナルスペースに注意が必要であることがわかってきました。
具体的にどのように距離を測ればよいのか見ていきましょう。
個人差があるため相手に合わせて
パーソナルスペースには個人差があり、相手に合わせた距離の取り方が必要です。
明るい性格の人であれば、パーソナルスペースが広く、関係が浅い相手に対して100cm以内に近づいても、自信はあまりお苦手意識を感じることはないでしょう。
こうしたタイプは、体より顔を近づけて話す癖があったり、身振り手振りをつけてわかりやすく伝えようとしたりします。
パーソナルスペースの狭いタイプの人は、穏やかで自分のことをあまり話さない傾向にあります。
一見明るく見えるタイプの人もいますが、目をそらしながら話したり、こちらが近づくと後ずさりしたりする癖がある人は、パーソナルスペースが狭い人と判断ができるでしょう。
親しくなりたければ位置を意識
親しくなりたい人がいる場合は、パーソナルスペースの広さだけではなく、位置にも注意が必要です。
対象が男性の場合は、正面から対峙するよりも横並びになるよう意識しましょう。また、男性は自分の後方にもパーソナルスペースが必要と感じている人が多く、急に後ろから近づいたりすると、不愉快にとられる可能性があります。
対象が女性の場合、パーソナルスペースが狭く、全方位から近づかれても気にとめない傾向があります。ただし、苦手と感じる人に対しては警戒心を強めることもありますので、まずは距離を取ってあなたのことがよく見える正面から近づくとよいでしょう。
まとめ
パーソナルスペースは、人間が持っている目には見えない縄張り、人との境界線のことです。
親しければ、かなり近い位置までパーソナルスペースに入り込むことができますし、初対面の人や苦手な人とは、距離とらなければなりません。
性質や性差、生まれ育った環境などによって個人差があるため、親しくなりたい人がいる場合は、性格や行動を見極めてパーソナルスペースに安易に踏み込まないよう注意が必要です。
パーソナルスペースをうまく取って、円滑な人間関係を築きましょう。